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琥珀色の夜と、小さな約束

風が少しだけ冷たくなってきた夕暮れ時。

ドラゴンのカイと、ネズミのペッパーは、切り立った崖のふもとで足を止めた。

​「ねぇカイ、今日はここをキャンプ地にしようよ! 川も近いし、地面も平らだよっ!」

​ペッパーがカイの大きな耳元で元気よく叫ぶと、カイは「グルル」と優しく喉を鳴らして、背負っていた荷物を下ろした。

荷物といっても、カイにとっては手のひらサイズの小さな布きれだが、ペッパーにとっては立派なテントだ。


 設営が始まると、二人のチームワークが光る。

ペッパーがせっせとテントの支柱を立てて紐を引き、カイはその大きな爪を器用に使って、ピッピが届かない高い位置の布を固定する。

いつも手際が良い。

​「よし、できた! 見てよカイ、今日も最高の我が家だよ!」

​完成したテントの横で、カイはふぅーっと優しく火を吹いた。

集めておいた枯れ枝に、料理にちょうどいい小さな火が灯る。

ペッパーはカイの鼻先を借りて、小さな鍋で木の実のシチューを煮込み始めた。


​ 夜が深まると、カイはテントを囲うように体を丸めた。

そして自分の大きな右翼を、傘のようにテントの上へと広げた。

​「あったかいなぁ……」

​そう言いながらテントの中からペッパーが顔を出す。

カイの体温と、守るように広げられた翼のおかげで、テントの中は春のようにポカポカしている。

​「ねえ、カイ。明日はあの『星降る峠』を越えるんだよね? 頂上についたら、僕を一番高い岩の上に立たせてくれる?」

​カイはまぶたを閉じながら、ゆっくりと頷きました。

ペッパーの小さな冒険心を満たしてやるのが、カイにとっては何よりの楽しみだった。


 ​やがて、静かな寝息が二つのリズムで重なり合う。

大きなドラゴンの鼓動と、小さなネズミの鼓動。

二人の旅は、まだ続く。


ドラゴンのカイと、ネズミのペッパー
ドラゴンのカイと、ネズミのペッパー


 
 
 

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